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下記はクスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方(PHP研究所)から。一部改変。
咳に使われる市販薬の成分には、脳の咳中枢と呼ばれるところの働きを抑制して効果を発揮する鎮咳薬と、交感神経を刺激して、気道や気管支を広げるタイプの交感神経刺激薬とがあります。痰の症状に使われる去痰薬には、痰を出しやすくする作用があります。
◆鎮咳薬
脳の咳中枢と呼ばれるところの働きを抑制して、咳止めとしての効果を発揮する鎮咳薬は、非麻薬性鎮咳薬と麻薬性鎮咳薬の2種類に分けることができます。いずれも副作用には、便秘や眠気があります。そして鎮咳薬で特に注意が必要なのは、麻薬性鎮咳薬のコデインリン酸塩水和物とジヒドロコデインリン酸塩です。
麻薬性鎮咳薬は、医療用としては鎮咳薬のほか、止瀉薬(下痢のクスリ)や鎮痛薬としても利用されていますが、市販薬では鎮咳薬としてのみ利用されています。有用な成分であるのですが、薬物乱用・薬物依存につながりやすいことが知られており、使用する際は、慎重さが求められます。
そのため、咳がひどい場合や症状が長引く場合は、医療機関を受診するという選択肢も忘れてはいけません。かぜ以外の病気、例えば肺炎や喘息なども疑う必要があり、その場合は原因に合った治療なしでは、病気の程度が重くなってしまう危険性があるからです。
◆交感神経刺激薬
かぜをひいて、空気の通り道である気管や気管支に炎症が起こると、呼吸の際の空気の通り道が狭くなったり、その中に溜まる分泌物が増えたりして、咳や痰がひどくなり、とてもつらく感じる場合があります。
そんな場合、交感神経を刺激する成分が、気管や気管支を拡張することで、症状を和らげてくれることがあります。交感神経刺激薬の働きや副作用については、自律神経(交感神経・副交感神経)の「交感神経を刺激する成分」を参考にしてください。
ジプロフィリンとテオフィリンは、医療現場では、喘息の治療薬として使われています。医療用ではテオフィリンがよく使われており、比較的、副作用が出やすいことが知られています。そのため、テオフィリンを服用中の患者では、血液検査で、テオフィリンが血液の中の濃度がどのくらい高くなっているか調べ、量が多すぎないか、慎重に経過を観察することもあります。ジプロフィリンも、テオフィリンと同様の特徴があります。
エフェドリンはオリンピックなどの体育競技では、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)により禁止物質とされています。日本の選手が、市販薬を飲んで出場停止というニュースを目にすることがありますが、エフェドリンが関与しているケースもあるようです。なお、エフェドリンには心臓に影響してしまうデメリットがあり、それを改良した新しい成分が、医療現場では使われるようになり、現在ではあまりみかけなくなりました。また、エフェドリンは、麻薬性鎮咳薬と同様、薬物乱用・薬物依存につながりやすいことも知られています。そのため、エフェドリンの効果が期待できる症状のないときや、症状の程度が軽いときはできるだけ避けたいところです。エフェドリン入りか否かについて、市販薬を購入する際は関心をもっておいてください。
トリメトキノール塩酸塩水和物とメトキシフェナミン塩酸塩は、エフェドリンと同様、オリンピックなどの体育競技では、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)により禁止物質とされています。
なお、市販の鎮咳去痰薬には、抗ヒスタミン薬を含む製品も多いようです。
◆去痰薬
痰が粘っこいときや多いときは、何度も咳が続きます。咳だけでもつらいのに、出にくい痰が多くあるとさらにつらくなります。去痰薬は痰の粘り気を抑えたり、気管支粘膜の修復を促したりして、痰を出しやすくする作用があります。痰によるつらい症状がある場合は役に立ちます。