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報道事例を参考に具体例を説明し、対応策を考える。
【報道事例】2014年に流行したデング熱
【元の資料】2014年(平成26年)9月16日の厚生労働省の報道関係者向け資料「デング熱診療ガイドライン(第1版)について」(外部リンク)
1)市販薬の「ブランド名」
2)成分の「一般名」
3)市販薬の多くは合剤
4)日本では古い成分が今も現役、海外では使われていない成分も
5)「フルネーム」ではない!
6)非ステロイド性抗炎症薬の定義のゆらぎ
*市販薬製品に付く( )内は右記冊子のページ番号:A=【クスリ早見帖ブック市販薬354】 / B=【クスリ早見帖2018年版】
AとBの出版物の説明はこちら
「このクスリを避けましょう」という記事の場合
→「ロキソニン」のブランド名だけでは、同じ成分を含む他の製品に気づかないかもしれない。
「ロキソニン」の成分「ロキソプロフェン」を使っている製品名の一覧
ロキソニンS(A46/B20) / ロキソニンSプラス(A47/B20) / ロキソニンSプレミアム(A47/B20)
ロキソプロフェン錠「クニヒロ」(A18/B16)
エキセドリンLOX(A36/B-) / バファリンEX(A44/B-) / コルゲンコーワ鎮痛解熱LXα(A37/B-)
*本サイト掲載中の製品で使われている成分を示す(*全製品からの検索結果ではない)
アスピリンを含む市販薬製品をチェック
エキセドリンA錠(A36/B-) / エキセドリンプラスS(A-/B-) / ケロリン(A37/B16) / ケロリンA錠(A37/B-) / 後藤散(A37/B-)
後藤散かぜ薬顆粒(A20/B-) / 歯痛リングル(A-/B-) / バイエルアスピリン(A43/B-) / バファリンA(A43/B19)
*本サイト掲載中の製品で使われている成分を示す(*全製品からの検索結果ではない)
アスピリンには別の一般名「アセチルサリチル酸」がある。(アスピリン=アセチルサリチル酸)
市販薬には「アセチルサリチル酸」としか表示されていない製品があるため、アスピリン(アセチルサリチル酸)などと併記して報道するほうが安全である。
市販薬の「商品名」と「成分に関する問題」の医師調査(3-3/スライド9枚目)
*「アスピリンと書かれていないアスピリン問題」について、医師の認知状況を示すアンケート調査結果
記事で「アセトアミノフェンが含まれる市販薬」として紹介された「ノーシン(A41/B18)」の成分をチェック
アセトアミノフェンとエテンザミド、カフェイン水和物と3つの成分が含まれている。
成分ひとつの薬剤を単剤、成分が2種類以上の薬剤を合剤(または配合剤)と呼ぶが、合剤の場合は他の成分チェックも必要。
従って、ノーシンではアセトアミノフェン以外の成分チェックも必要 →4)
ノーシンに含まれるエテンザミドって何? → 成分一覧表(A10/B4)または 成分一覧ページ
エテンザミドは、アスピリン(アセチルサリチル酸)と同じく、サリチル酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に該当する。
エテンザミドを含む市販薬製品をチェック
グレランエース錠(A-/B16) / ストナデイタイム(A23/B-) / ストナプラス2(A22/B-) / サリドンA(A38/B-)
セデス・ファースト(A39/B-) / セデスV(A39/B-) / 新セデス錠(A38/B17) / 大正トンプク(A39/B-)
ナロン錠(A40/B-) / ナロン顆粒(A40/B18) / ナロンエース(A40/B-) / ナロンエースR(A40/B-) / ナロンエースT(A41/B18)
ノーシン(A41/B18) / ノーシン錠(A41/B-) / ノーシンホワイト錠(A42/B-) / ハッキリエースa(A43/B-)
*本サイト掲載中の製品で使われている成分を示す(*全製品からの検索結果ではない)
市販薬の「商品名」と「成分に関する問題」の医師調査(3-4/スライド10枚目)
*エテンザミドについては医師の認知度も非常に低い、という状況を示すアンケート調査結果。
*エテンザミドは海外や日本の医療現場でもほとんど使われていない。他にも同様の成分あり。
日本では古い成分が今も現役、海外では使われていない成分も → 「市販薬のガラパゴス化問題」
記事で「アセトアミノフェンが含まれる市販薬」として紹介された「バファリンルナ」
→ 本サイト右上の「市販薬の関連情報」を使ってページ内検索(Ctrl+F で呼び出す)
バファリンルナi(A43/B19) と バファリンルナJ(A44/B-) の2種類がヒット
ともにアセトアミノフェンを含むが、前者は合剤でイブプロフェン(プロピオン酸系の非ステロイド性抗炎症薬に該当)を含み、後者は単剤であることがわかる。
市販薬の製品名は、認知度の高いブランド名に、効果が高そうなイメージのあるカタカナ語やアルファベットを追記するものが多く、フルネームを正確に把握して記事にしないと、誤った購入・服用を誘導する危険な情報になってしまう。また、記事をネットに残す場合、その後発売される新製品により想定外の問題が発生する可能性もある。そのため、記事の公開期間が長い場合は、製品名紹介を控えるということも検討したほうがよいのではないか。
今回取り上げた報道は、デング熱が流行しているので「非ステロイド性抗炎症薬」を避けましょう、というのがメインメッセージ。
そして、解熱鎮痛薬を使う場合は、アセトアミノフェン製剤(かつ、「非ステロイド性抗炎症薬」を含まない)がよいでしょう、という内容。
「非ステロイド性抗炎症薬」の副作用には、抗血小板作用や、胃潰瘍・十二指腸潰瘍など胃腸障害があり、それらが出血の危険性を増し重症化を促すおそれがあるため、「非ステロイド性抗炎症薬」を避けましょうということ。そして、アセトアミノフェンにはそれらがほとんどないため、解熱鎮痛薬を使うとしたら、アセトアミノフェンがよいでしょう、ということ。
→再掲 2014年(平成26年)9月16日の厚生労働省の報道関係者向け資料「デング熱診療ガイドライン(第1版)について」
(別添:「デング熱診療ガイドライン(第1版)」(PDF:534KB)、の3ページ目(治療)をご確認ください。
本サイト右上の「市販薬の関連情報」掲載中の市販薬製品で使われている【非ステロイド性抗炎症薬」は計7種(2019年1月25日時点)
アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、サリチルアミド
アルミノプロフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェン
*本サイト掲載中の製品で使われている成分を示す(*全製品からの検索結果ではない)
また、非ステロイド性抗炎症薬には、アセトアミノフェンを含めないとする定義が一般的であるが、アセトアミノフェンを含めて非ステロイド性抗炎症薬している病院サイトや医学書があり、非ステロイド性抗炎症薬をゆらぎなく理解するには、なかなか難儀な情報環境となっている。
「非ステロイド性抗炎症薬の定義のゆらぎ問題」
結論: 報道関係者と医療関係者が協力して、市販薬の情報を分かりやすくするための用語集を作成するなど継続的な取り組みが必要。
取り組み例 →「病院の言葉」を分かりやすくする提案(外部リンク)
(文責:平 憲二 2019年2月5日)